★灰玉のジレンマ? 〜不完全性のジレンマ〜
――id:mind:20050924(必読)から、不完全性定理(様相論理版)つながり
――id:mind:20050915から、 newCombの赤玉青玉のジレンマつながり <比べてみよう?
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◆灰色ワニGuderianによる、灰玉赤玉のジレンマ(創作初出)
――単純モデル化のために、誰でも灰玉1コを得たときは、誰かが赤玉2コ得たときと相等の、経済的利得を得るとする
ここGazth-Sonikaは、戦乱の地であると同時に、人知れない赤玉の原産地でもあった。
ある朝Bが、教会での礼拝の帰り、
礼拝で提示されたある問題
について物思いに耽りつつ沼の淵を歩いていると、誰かが自分を呼ぶ声が聴こえたような気がした。
慌てて振返ると、あぜ道を踏外して、泥の中に転げ落ちてしまった。しばし茫然として、最初は何が起ったのか判然としなかったBだが、
ようやく我に返って、泥の中を覗き込むと、昇りかけた太陽の光を反射しキラキラと輝く小石を見つけた。
震える手で泥水に漱ぎ、日光にかざしてみると、見事に磨き上げられた赤玉の裸石であった。
「まあ、なんて濃く透き通った赤色なんでしょう!! ……どこかで嫌というほど視せられたことのある色……?」
するとその時、背後から退役灰色ワニのGuderianが、濁った水面から眼だけ出しながら、Bの心に話しかけてきた。
「その赤玉は儂が密かに大切にしているものじゃ、もしよければどうにか返してはくれんかのぅ?」
Bは灰色ワニの眼から赤い水が流れ出しているように観えたことにも驚いて、直ぐにその赤玉を返したが、顔にはガッカリした表情が表れてしまった…。
Gは、自分の言葉が通じていること、つまりは自分のせいでBが泥だらけになってしまったということに済まなくも思い、
また、人間の中でもこにいるBのような生き物には希望が観えるような気がしたこともあって、
いつもの癖で、つい問いを発してしまった。やおら滑らかに口を開けて、灰玉と赤玉を鰐牙色の牙々の間に示すと、
- ① 「もしも御主が「灰玉をもらえる」と確証できなかったときに限り、灰玉をあげよう」
- ② 「もしも御主が「赤玉をもらえる」と確証できた ならば、灰玉はあげないが、赤玉はあげる」
「ほれ、それでも御主は、どちらか(または両方)の玉を欲しがるかね?」
Bはしばらくその場で考えていたが、どう答えるべきか一向に解らなかったので、
「どうか今日一日考えさせて下さいな。答えが出たならまた来ます、ごきげんよう、灰色ワニさん…」
と言い残して、自分の家に帰って行った。
しかし、家で一日中考えていても、どうにも答えは出なかった。それにまた、礼拝で示された問題も頭から離れなかったので、ベッドでうなされながらとうとう眠りについてしまった……。
…………
ところが、次の朝起きてみると……?!
―― もし私がBならば、きっと目の前の 赤玉 の妖しい魅力に取憑かれ、「道」を踏外してしまうことでしょうw
―― アナタは、どの玉をもらえるタイプの人ですか?
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(解説) この問題は非道い。Bに感情移入してみると、
「灰玉をもらえるか」は、とりあえず良く分らない(はず)。
ただし、Bが、利己的であれば、「とりあえず、もらえるものだけはもらっておかなきゃ!!」と、
念仏とか言霊を信じた結果、「赤玉をもらえる」と信じて、赤玉をもらうことはあるだろう。
――青玉の言霊のジレンマ id:mind:20050916
しかし、その場合は②により
「灰玉をもらえない」:~gとも確証することになる。
――下の方の第一不完全性定理の証明βをみてみよう。Bが~gを確証するってことは、安定でないか、または、整合でないか。
そして、①より、
g ≡ ~Bg
⇒ ~g ≡ Bg
であるから、
「灰玉をもらえる」と確証する:Bg、とも確証する 。
Bが安定であれば、gを確証する。つまり、B├g は真。(ついでに、Bは不整合 ;)
(Bの心の記号化) ├
① g ≡ ~Bg
⇒ ~g ≡ Bg
② ~g
→ Bg
=>g ====Bは安定: B├ Bx ならば B├ x
(→⊥)
┤つまり、B├ g は真
すると、①により、実際に灰玉はもらえなくなってしまう。
―― 我々から観ると、赤玉をとることにより、「灰玉をもらえる」と確証さえしなければ、Gは灰玉をくれたのにもかかわらず…である; ;
―― かわいそうに、Bは、利己的に振舞った罰を(知らないうちに)受けたのだろうか?!
――舌切り雀の"ごうつく婆さん" みたい?
――囚人のジレンマで、自分の鏡にしっぺ返しされたplayerのことだろ?
――Bを観察して判る、上記のことを、<我々の説明を模倣することによってBは知りうるのであろうか??
――上のように非道い問題はとりあえず置いといて…、
◆灰玉のジレンマ =====================================================
異聞によると、GはBに対し、単にこう述べたという。
G:「もしも御主が「灰玉をもらえる」と確証できなかったときに限り、灰玉をあげよう」
「ほれ、それでも御主は、灰玉を欲しがるかね?」
―― アナタは、灰玉をもらえるタイプの人ですか?
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―― 否定がある分、『クレタ人の嘘つき』 に似てる。
けど、「B(〜を確証する)」の一段ズラして、半回転ねじって留めて、メビウスの環を造るような感じ。
―― ゲーデル文(ゲーデル命題)っていうのね。――Bはゲーデル型人になっちゃったってことか…。
――「(自らの)罪を確証する者は罪人ではない」ってこれは『灰羽』ネ
(記号化)
g BがGから灰玉をもらえる
Bg Bがgを確証する
灰色構成式 G: 「灰色ワニGがBに言った」
「もしも貴方が「灰玉をもらえる」と確証できなかったときに限り、灰玉を差上げましょう」
G: ~Bg ≡ g
もしBがgを確証できなかった ならばそのときに限り、gは現実に正しくなる。 ――もしGがウソつきでなければね。
―― 既にアナタもどこかで灰色ワニGに巡り会っているかも……
◆第一不完全性定理の証明(様相論理版)
BはⅢ型、f1000を証明済み
B├
・f1000: B(B⊥⊃⊥) ⊃B⊥ 否定記号の定義より、
⇒ B ~B⊥ ⊃B⊥
〔 ⇒ ~B⊥ ⊃~B ~B⊥ ――第二不完全性定理を表わす記号列
〔こちらはG型などf1000を証明する形式システム内で証明可能でした id:mind:20050924
tt) ⊥ ⊃ ~B⊥
- > B(⊥ ⊃ ~B⊥) ==== Bは(Ⅲ型で)正常
→ B⊥ ⊃B~B⊥ ==== Ⅱ型の公式より
→ B⊥ ≡ B~B⊥ ==== H=B~H ――対角化原理?
==== Bc⊃cのような順方向不動点式であるのみならず、双方向で真正な論理的不動点式
⇒ ~B⊥ ≡ ~B~B⊥ ====灰色構成式
┤
<第一不完全性定理の証明 β
Bを観察すると、
B├ ~B⊥≡ ~B~B⊥ 。
g を ~B⊥ とおくと、 ====灰色命題 g
B├ g ≡ ~Bg 。
B├ g と仮定する。
Bは三段推論できることとから、B├ ~Bg 。
BはⅢ型で正常。よって、B├ Bg 。
よって B├ ⊥ 。
すなわち、Bは、正常で整合ならば、 gを証明しない。 ====第二不完全性定理、だよね ――id:mind:20050924
B├ ~g と仮定する。
Bは三段推論できることから順次、B├ ~g ≡ Bg だし、B├ Bg 。
Bは安定。よって、B├ g 。 <ここの自己形式化が整合なままでは不可能
よって B├ ⊥ 。
すなわち、Bは、安定で整合ならば、~gを証明しない。
まとめると、
BがⅢ型で、f1000を証明し、安定で整合ならば、
~g も g も証明しない。
これは、かような
Bが、命題 g について不完全である ―― gは「不立文字」か?
ことを意味する。
―― 古典論理では、形式上 pv~p (排中律)の使用を無条件に認めるので、
g か、~g の少なくとも一方は、現実的に正しい (という事実上の意味になる)
ので。 (ただし、一般的に排中律を肯定すること を否定する のが直観主義論理。pと|= pを同視するという…
(証明おわり)
ところが、~g v gは恒真式(排中律)なので、
B├ ~g v g 。
なにかしらBに悲哀を感じるが、それは我々にも跳ね返ってくる。
すなわち、
B├
tt) g⊃g
-> B(g⊃g)
Ⅱ) B(g⊃g) ⊃(Bg⊃Bg)
→ Bg⊃Bg
┤以上のBの観察により、
B├ g⊃g
も、 B├ g ならば B├ g
も、 B├ B(g⊃g)
も、 B├ Bg ならば B├ Bg
も言える。
/しかし、
B├
tt) ~g v g
――ここから
B├ ~g または B├ g
と観察できるわけではない。そういう観察は、第一不完全性定理と両立しない。
――~g v gだけでなく、一般に、
B├ pvq から、
B├ p または B├ q
という観察はできない。できるのは、
B├ ~p ⊃q から、 ――B├ (p⊃⊥) ⊃q
B├ ~p ならば、B├ q ――B├ (p⊃⊥) ならば、B├ q
というぐらい。
-> B( ~g v g)
Ⅱ??) B(~g v g) ⊃(B~g v Bg)
→ B~g v Bg ??
――こういう操作も公式にない。
我々にできないことはBにもできない。 いや、
Bにできないことなので我々にもできなかった
というべきか? ――我々とBが同じ型ならね。
┤以上のBの観察により、
B├ ~g v g
B├ B( ~g v g)
が言えるだけ。Bの立場も、我々の立場も、直観主義論理とそんなに離れているわけではない?
(定義)"システムBは安定": B├ Bx ならば B├ xであること が、どんな命題xについても常に成立つこと。
< 安定性 のジレンマ
「自分を安定」と信じていると、
謙虚(レーブ的)かつ、 (⊂ G型)
安定
ならば、不整合 になってしまう ことを、 かようなB を観察することにより、以下証明する。
B ├
・BB⊥⊃B⊥ ――Bは自己の安定性を信じる: BBX⊃BX の形の凡ての命題を信じる
―― <自信過剰者 BX⊃X の形の凡ての命題を信じる人 と、どう区別すんの?
-L> B⊥ ――Bは謙虚: B├ Bx⊃x ならば B├ x
=> ⊥ ――Bは安定: B├ Bx ならば B├ x
┤ よって、
Bが、「Bは安定」と信じて、謙虚かつ、安定ならば、不整合 。
対偶換言していくと、
Bが整合ならば、Bは、謙虚でないか、安定でないか、「Bは安定」と信じないか。
→ 整合なシステム某は、 謙虚かつ 安定だと、「自分は安定だ」ということを知ることが出来ない!!
(証明おわり)
―― これだけでも不完全性っぽい。
けれど、そういうシステム某がそもそも存在し得ない という可能性も考えに入れるから、 不完全性の証明 とは言わないってこと?
<Bが、"自己の" 不完全性を証明できるか
安定性のジレンマの答え は、整合、謙虚、安定な
Bが、「自分が安定だ」ということを前提として論証を進めることができない
ことを示している。
ところが、我々がBの不完全性を証明した 第一不完全性定理 には、
Bが安定であること
が仮定として含まれている。従って、
Bが、我々による証明を模倣して、形式化して内部に取込み、実質的には同一の操作を繰返して証明すること
は、出来ない…。(証明の途中で不整合に陥ってしまう!)
⇒ (今のままの)Bは、
真である(と我々が非形式的に証明した)命題 g
を形式的に証明するなどして、
自己の不完全性
を証明することは出来ない(はず)。 ――なんてったってBには形式的な推論能力しか持た(せ)なかったので。
ただし、システムBに、gないし~gを公理として付け加えてB'を構成すれば、それはシステム内で証明可能となる。
しかし、我々は常に同様な方法(対角化論法 id:mind:20051001)を用いて、新たにg'を構成し、そういうB'の不完全性を非形式的に証明できる から、
新しいシステムB'もまた常に不完全である。
―― 実数の完全なnumberingリストは作成できない、というアレと同じ対角線論法。
もっとも、そういう(イジワルな?)観方に、対処し新しい公理を付け加え続けて行くこともまた常に可能である。
――「そういう下賜programmingは人間様にしかできない」とされてきたけどw
――「無限ループによる試行錯誤」という「アルゴリズム」の範疇に含まれないprogrammingも可能であり、それは一旦(「神様」によって?)下されると、あとは絶滅するまで自走し続けるよね。さまざまな変奏曲の捧げもの(DNA?)に袂を分かちつつも……
―― 「完全性」を"環境適合性"と読み替えると生物学的に興味深いってこと
――われわれ人間どもにつながる生物を(programmingし)造った「神様」は、いったい何考えてたんでしょうw
<人間の機械に対する優越性 ――不完全性定理の帰結?
―― こういう (第一)不完全性定理 を根拠としてか、
記号とかの「形式に必ずしも囚われない」、われわれ人間どもは、 ――自由意思か?
(人間様の下すった?)programという形式に囚われた、そこらの機械どもよりも、
優等な知能を持った存在である
とする考えが(エライ哲学者じいさんの間で?)一般的。
――そうか、「囚人」とは、「形式」論理に「囚われた」人々のことを言うのか、ガッテン! ――謎w ――単純合理性?
しかし、Bが我々を観察してたらどうなるんだろ?
もしも私が、
整合かつ 謙虚かつ 安定 である場合、
はたして私には、
「自分は安定だ」
ということを知ること が可能なのかな?……@@??
――アナタがBならどう観察・推論しますか? ――(ぁぁ私はAに堕ちてゆく……w)
(資料) ---------------------------------------------------
<第一不完全性定理の証明 α Bを観察すると、 B├ ~B⊥≡ ~B~B⊥ 。 g を ~B⊥ とおくと、 ====灰色命題 g B├ g ≡ ~Bg 。 B├ ~Bg と仮定する。 Bは三段推論できることとから、B├ g 。 BはⅢ型で正常。よって、B├ Bg 。 よって B├ ⊥。 すなわち、Bは、正常で整合ならば、 ~Bgを証明しない。 B├ Bg と仮定する。 Bは安定。よって、B├ g 。 <ここの自己形式化が不可能 B├ g ≡ ~Bg と、Bは三段推論できることとから、 B├ ~Bg 。 よって B├ ⊥ 。 すなわち、Bは、安定で整合ならば、Bgを証明しない。 まとめると、 BがⅢ型で、f1000を証明し、安定で整合ならば、 Bg も ~Bg も証明しない、つまり、 ~g も g も証明しない。 これは、かような Bが、命題 g について不完全である ことを意味する。 (証明おわり)
*1:② 「もしも御主が「赤玉をもらえる」と確証できた ならば、灰玉もあげるし、 赤玉もあげる」――異聞――と言ったのでは、上手く行かない。Gが約束②を守ろうとすると、Bが赤玉をもらえると確証した場合、「灰玉をあげる」ことになる。それをBが確証すると、約束①では、灰玉はあげてはならないことになり、約束を両方守るのが不可能にな(り出題ミスにな)るので。