死刑執行(.exe-cution)すべきか? 闇雲に考え続けるべきか? のジレンマ
――主権国家つながり??
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――『お口の中の青玉』つながりid:mind:20050831
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『能吏と宦官』〜King Lui's hidden examination〜
時は三十年戦争初期、国際情勢が焦臭くなってきた頃。ところは西ヨーロッパの某フランス王国。
仲の悪い2人の地方出の宮廷貴族が、各々従者を1人づつ小姓として召し抱えていた。
従者たちは、有能な官僚(能吏)*1だったが、
各々の主人に特別な愛着を感じていたため、他の貴族によって引抜かれることを心配して、
・ 他の貴族の前では、怠惰な官僚(宦官)*2を演じていたのだった。
もちろん、主人の前では能吏として振舞っていた。
それゆえ、貴族たちは、自分の従者が能吏か宦官かは、誰も知らなかった。
この国の王様は、時節がら、周辺国との 情報戦 を予期し、
貴族諸侯の、内外状況観察能力と、論理的思考能力に大いなる不安を抱いていた。
そこで、王様は、この貴族たち2人を招集してこう言った。
「諸君らは、他人の従者のことは観ていても、自分の従者のことを少しも判っておらぬな。 よいか、
・ 諸君らの従者のうち、少なくとも1人は宦官じゃ。
・ 主人たるものは、
「自分の従者が宦官」と確証できた
ならば、
即刻その首を刎ねよ。
ただし、
従者が能吏である のに首を刎ねたり、
従者が宦官である のに首を刎ねなかったり
した場合には、自分の首を失うことになろうぞよ。
以上で宜しいかな、諸君? *3
」
貴族たちは、パニックに陥り、ただただ青くなるばかりであったが、、、
やっとの思いでようやく王様に猶予を乞うた。
そしてこの日を第1日として、第2日目まで考えることを許された。
さて、それぞれの領地に帰らされた貴族たちは、次のように考えた。
「 王様は嘘をつかない。
実際、よその従者は宦官ばかりなのに、
肝心のおれの従者が宦官かどうかは、おれにはさっぱり判らんからなあ。
王様の話だと、他の奴らもおれと同様に、他人の従者のことはハッキリ観えてるらしい。
ということは、他の奴らに聞けば、おれの従者のことは判るはず
だが、といって、聞くぐらいなら死んだほうがましだ。
さて、どうしたものかなあ。」
ところで、この国は、地方貴族に対する行政統制がたいへん厳しいので、
『中央官報』という日刊官報誌が刊行されていた。
これには、中央ばかりか地方貴族の、大臣から召使い道化に至るまで、
人事異動の凡てが、翌日掲載 されている。
貴族の家には毎朝無料で配達されるので、他の貴族がどうしたかと目を皿のようにして読むのだ
が、いたって平穏無事で、誰それが従者の首を刎ねたというような話はちっとも載らない。
こうして平穏な1日が過ぎた。
第2日目の官報には、地方貴族の従者の処分についての報はなかった。
官報を読み終えた貴族は、顔面蒼白にして震えながら立ち上がり、従者を呼び付け、即刻、首を刎ねた。
こうして2人の従者の首が、一斉に跳んだと云う……。
…………
王様「(浅薄者らめが……;)」
…………
―― 貴族たちは、
どういう事実を観察して、
どういう推論過程により、
「自分の従者は(能吏ではなく)宦官だ」
と確証してしまったのだろう??
―― 人数(と日数)を増やしたかったら増やしてね♪
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(問題)
――自分が貴族になったつもりで考えてみましょう
< もしアナタだったなら、
「自分の従者が宦官だ」
と結論して死刑執行できるかな? パラドックスに陥らないままで。
――自分が王様の道化(数学者ないし「傍観者」という名の囚人)になったつもりで考えてみましょう
< もしアナタだったなら、
「 貴族たちが、
「自分の従者が宦官だ」
と確証する」(従って従者の首が跳ぶ)と結論できるかな?
そう結論できた人に問題。
<貴族たちは不整合に陥らないだろうか?
そう結論できない人に問題。
<どんな条件を加えたら、結論できる?
(質問を求められた場合に明らかにしたであろう、追加条件)
王様 「 ふむ、これは実に大切なことなのじゃが、
次の客観的事実について、諸君らにはまだ明確な共通認識がなかったはずである。
(ぇ、自分で発見できた? それはそれは興味深い…)
あいにくなことに諸君らはとっても仲が悪いようじゃが、
たとえ互いを知り尽くしていたとしても、
次のことは知らなかったと思う。
・ もし諸君らのうち任意の1人に、
「自分の従者が宦官」と確証できた
ならばそのときにかぎり、
その他の諸君も、
「自分の従者が宦官」と確証できるであろう。
以上。」
王様「……おっとおっと、おのおの方、くれぐれも、
こと本件に関しては自分の観察論理能力に自信を持ち給えよ?w
(うっかり言い忘れるところであった。ふぅ…)
・ もし諸君のうち任意の1人が
「自分の従者が宦官」と確証できた
ならば、
その者の従者は宦官である。
以上。」
王様「 ムニャムニャ…(ここまで喋らされてしまったからには前言修正…)、
(たとえルイが 嘘つき であったとしても、
やはり逆に 悪者 になってしまっては示しが付かぬからのう。)
(たしかに、裁判とは何度でもやり直しがきくが、
"死刑執行"とは完く取返しのつかぬ既成事実じゃからして。。。)
なお、こと"従者の"死刑執行については、人柱の藁人形を以て執り行うように…。
(…これくらい人事に厳しくなくては、
主権国家の生き残り競争
には勝てぬのじゃ、許せ、諸侯どもよ…)」
――はてさてそれでは、"諸侯らの"生首は跳んだのか否か??、くわばらくわばら……
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(問題)
この2つの条件がなくても問題を解いてしまう人(含む数学者)とは、どんな人?
><
(ネタもと、というか原作)
『賢いサルタンと40人の不貞な女房』
『煤で汚れた3人の顔』
『3人の帽子』
『お口の中の赤玉青玉』w ――id:mind:20050826
などのvariationとして広く知られている、(らしい)
『40人の貴族とその従者』の、(無断)改変版(2次創作)です。
――『詭弁論理学』野崎昭弘(中公新書)*4
に引用されてる、『数学セミナー』1973年9月号 掲載 という…
この問題などに関して、本書には、「論理的な」数学者と、非論理的な?普通の人々との議論が収められているので、お買い求めるなどして、ぜひご覧下さいませ。
もとの問題文の引用は、検索で見つけたこちらを参照。面白い論理クイズ(パラドックス?)が載ってます。
http://rmagic.blog6.fc2.com/blog-entry-209.html
―― 比較してみれば、論理的な条件としては原作も本作も同一だと判るでしょう。
それを示すという目的からして、"全く違う表現"へと大幅に書き直しできないことが、著作権上苦しいところだったりして。
どうやら、
人数や日数を多くして数学的帰納法を使う
議論は、
観察推論の本質的な問題
から目をそらす効果があるようだ。
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(追記)
……ハイッ、1日が経過しましたw 従者の首は跳びましたか? あるいは貴族の首は……
A「
私Aの従者は 宦官か非宦官(能吏)か?、が私Aの問題。
* 私Aの従者は 非宦官、との事実を仮定する。
・ 貴族Bは、上の仮定事実を知っているはず。「貴族Aの従者は 非宦官。」
(なぜなら、宮廷での普段の観察により。)
・ 貴族Bは、右のことを知っているはず。 「従者らのうち少なくとも1人は宦官。」
(なぜなら、王様の言葉をみんなして共同して聞いたから。)
従って、Bには、右のことが"判る"はず。 「自分Bの従者が宦官だ。」
…1日も経ったのに…
しかし、Bには、右のことが"判らない"模様。 「自分Bの従者が宦官だ。」
とすれば、冒頭の仮定事実は不可能だ!!
よって、私Aの従者は… 宦官 … と"判った"(背理法ちっく)。
ひぇ〜ッ;
」
この推論は全く正当、合理的に観えるけど?、ぇ、合理的だとしても単純すぎますか?
――記号Aと記号Bとを入換えてみな〜
――間違っているとしたらどこが?